May 15, 2020

ラダック再訪。(2)


前回からの続きです。)

 世の中にはキルギスとかブータンとか、日本人とよく似た風貌の人たちが住むところがありますが、ラダックもそのひとつ。地元の人たちには驚くほど日本人な人がいます。定食屋でビリヤニを食べてたら店に入ってきた数人の軍人さん、その中の若手くんなんか、「近所の高校のサッカー部の部活の帰りです」と言っても違和感ない。日本語を解さないのが不思議なくらい。

 反対に、今回泊めていただいたNyamusyan House Homestayを切り盛りしてらっしゃる池田悦子さんは川崎のご出身、3人のお子さんもみんな日本で生まれた日本人なのに、違和感なくラダックに溶け込んで暮らしていらっしゃる感じでした。一番上のお姉ちゃんが学校に持っていくお弁当が不満だったらしく「ここは日本じゃないんだからあ!」とママに文句言ってたのはご愛嬌。

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 Nyamusyan Houseを拠点に1泊2日で小旅行に出かけました。標高が高いところでの本格的なトレッキングは自信がないので、車で途中まで連れて行ってもらって、まねごと程度に半日ほど山歩き。スタート地点からして既に標高3,500m前後、いつもは都内の海抜30mくらいのところで生活している僕には空気が薄くてツライので、そのくらいで勘弁してもらいました。車でYangthong村まで行って民家に1泊、そこからLikirまで、6,000m級の山々を眺めながら歩きます。







 いやもうね、広大でダイナミックな景色はこの土地ならでは。写真では伝わらないこの地の空気。車の中から見るのとは違って、ラダックの大地を生で感じることができました。やはり少しでも歩いてみるべきですね、ここまで来たのなら。ところどころでこの地の暮らしの様子もうかがい知れて、翻って自分の生き方を省みることになるのも旅の妙趣です。
 ただ、平坦なところはいいんですが、ちょっとでも登っているところはいちいち息が上がってたいへん。一緒に行った友人からも時々大きく遅れてしまいまして。高山病になってるわけではないし、歩けるんですけど、ゆっくりしか歩けない。僕は日本人としてはかなり大柄で、エンジンに比べて重量がある車みたいなものでして。でも、それでもやっぱり歩く価値はありますよ。

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 翌日は海抜4,000mを超えるところにある湖、Tso Karまで日帰りドライブ。途中、今回の旅で標高が最も高い5,359mのTanglang Laの峠を越えます。


 峠を越えてたどり着いた先はこの眺め。「わー、広いー!」と水辺に向かって駆け出そうとして、「あれ、変だ。動悸が止まらない…」ここが海抜4,000m超であることを思い出します。うっかり張り切って駆け出してしまうと倒れちゃいそうなので、ゆるゆると散策です。






 前回18年前のラダックの旅ではこの先のTso Moriri湖まで足を伸ばしたのですが、今回は日帰りなのでここまで。前回の時の自分の日記を見てみると、僕はTso Karに着く頃にはかなり疲れていて体調も良くなかったらしく、あんまり周りを見る余裕もなかったようですが、今回は湖を眺めながら熱くて甘いお茶を飲んで、双眼鏡で動物も観察して、ゆっくり過ごしてきました。

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 インドの旅はいつも裏切られることがありません。旅の目的はいろいろで、まあ一番簡単に行ってしまえばリラックス、リフレッシュなんでしょうが、インドの旅はなんていうか、頭を初期化するような効用があるように思います。都市の暮らし、日本の暮らしで凝り固まった頭をほぐすような。

 まして今回はラダック。インドと聞いてイメージするような人、人、人の波に巻き込まれることもなく、スケールの大きな自然とそこで生活する人々の暮らしと文化を見せていただくことができました。Nyamusyan Houseを切り盛りする池田悦子さんの思い切りのいい生き方をうかがうのも、自分の生き方を振り返り省みるよい機会になりました。

 実はラダックは意外と近い秘境です。東京からデリーまで飛行機で9時間台、そこから乗り換えてレーまで1時間半くらい。思い立ったら行ける場所だし、夏の避暑にも好適で、また行きたいと思う場所になりました。もちろん都市生活にはない不便もあるし薄い空気も体力を奪うので、誰にでもオススメできるわけじゃないですが、インド旅行が好きだという方は、一味違ったインド旅行として次の目的地の選択肢として検討してみてはいかがでしょうか。ぜひ。




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